SNSで商品やキャンペーンを発信するのは、いまや企業やお店にとって当たり前になりました。一方で、ひとつの投稿や広告がきっかけで批判が集まる、いわゆる「炎上」のリスクも身近になっています。「うちは小さい会社だから関係ない」と思っていても、拡散のきっかけはどこにあるかわかりません。
2026年10月17日、創作品モール「あるる」を運営する株式会社システムリサーチが、「SNSでの炎上」に関するアンケート調査の結果を発表しました。この記事では、その調査データと、総務省の研究誌に掲載された炎上の実証研究をもとに、SNS炎上対策の基本を「予防」と「初動」に分けて整理します。
調査概要|20〜60歳の400名に聞いた
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日 | 2026年10月5日 |
| 調査対象 | 全国の20〜60歳の男女 |
| 有効回答数 | 400名 |
| 調査方法 | インターネットアンケート調査 |
| 調査主体 | 株式会社システムリサーチ(創作品モール「あるる」) |
調査結果から見える3つのポイント
1. 約7割がSNSで商品・広告への批判を見たことがある
SNS上で商品・サービス、広告、キャンペーンなどへの批判を見たことがあるか、という質問では、「よくある」9.8%、「ときどきある」31.8%、「あまりない」26.5%で、見たことがある人は合計68.0%でした。「ない」は32.0%です。SNSを使う人の多くが、企業への批判を日常的に目にしていることがわかります。
2. 批判を見た人の49.3%が「購入・利用をやめた」経験あり
批判を見た人のうち、企業や商品への印象が悪くなったことが「何度もある」「ある」人は合計60.7%。さらに、批判がきっかけで購入や利用をやめたことが「何度もある」16.2%、「ある」33.1%で、合計49.3%にのぼりました。炎上は「話題になって終わり」ではなく、売上に直結するリスクだといえます。
3. 判断の決め手は「批判の多さ」より「中身」と「企業の対応」
購入・利用をやめた人に、判断に最も影響したものを聞くと、結果は次のとおりでした。
| 判断に最も影響したもの | 割合 |
|---|---|
| 批判のきっかけとなった出来事や内容 | 55.2% |
| 企業や関係者からの説明・対応 | 20.9% |
| SNS上での批判の多さ | 14.2% |
| ニュースなどSNS以外の情報 | 5.2% |
| SNS上で見た他の人の意見 | 4.5% |
「批判の数が多いから」よりも、問題の中身そのものと、企業がどう説明・対応したかのほうが、消費者の判断に影響していることがわかります。つまり炎上対策は、「火種をつくらない予防」と「起きたときの誠実な対応」の2本立てで考えるのが基本です。
炎上は「一部の声」が広がって起きる
総務省の『情報通信政策レビュー』第11号(2015年)に掲載された山口真一氏の論文「ネット炎上の実態と政策的対応の考察」では、約2万人を対象にした調査をもとに、炎上に書き込んだ経験のある人は約1.5%だったと報告されています。また、炎上の発生件数は2011年以降、年間200件程度で推移していたとされています。
やや前のデータではありますが、ネット上の批判は「ごく一部の人の書き込み」から広がることがある、という点は今も参考になります。だからといって批判を軽く見てよいわけではありません。今回の調査のように、批判を見ている側の多くが印象や購買行動を変えているからです。
SNS炎上を防ぐ「予防」の3ステップ
ステップ1. 運用ルール(ガイドライン)をつくる
誰が投稿するのか、どんな内容は投稿しないのか、承認の流れはどうするのかを文章にしておきましょう。担当者が1人の場合でも、ルールがあるだけで判断に迷いにくくなります。
ステップ2. 投稿前のダブルチェックを習慣にする
投稿や広告を出す前に、別の人の目で確認します。チェックするときは「特定の人や属性を傷つける表現がないか」「事実と違う内容や誇張がないか」「時事ネタや災害時の発信として不適切でないか」といった観点を決めておくと、もれが減ります。
ステップ3. 自社に関する投稿を定期的に見る
自社名や商品名でSNSを検索し、どんな声が出ているかを定期的に確認しましょう。小さな不満の段階で気づければ、炎上になる前に対応できることもあります。
担当者向け:投稿前チェックリスト
予防のステップ2で使える、シンプルなチェックリストの例です。自社の業種や発信内容に合わせて項目を足し引きして使ってください。
- 性別・年齢・国籍・職業などの属性を、ひとくくりにしたり笑いのネタにしたりしていないか
- 価格・効果・実績などの数字は、根拠を示せるものか
- 広告やPRであることを、受け手がわかる形で表示しているか
- 災害や事件・事故が起きている最中に、配慮を欠いた発信になっていないか
- 画像や音楽、文章などに、他人の権利を侵害するものが含まれていないか
- 個人が特定できる情報(顧客の顔、名前、レシートなど)が写り込んでいないか
小さなお店や個人事業では、チェックする人がいないことも多いはずです。その場合は、投稿を予約しておき、時間をおいて自分で読み直すだけでも、勢いで書いた表現に気づきやすくなります。
炎上したときの「初動」2ステップ
ステップ4. 事実確認と、対応方針を決める
批判に気づいたら、まずは何が起きたのか事実を確認します。あわてて投稿を消したり、反論したりすると、かえって火に油を注ぐことがあります。社内で情報を共有し、誰が・いつまでに・どう対応するかを決めましょう。
ステップ5. 誠実に説明し、改善策を示す
調査で2割の人が「企業や関係者からの説明・対応」を判断の決め手にしていたように、対応そのものが評価されます。問題があった場合は、何が問題だったのか、今後どう改善するのかを、わかりやすく説明することが大切です。法的な判断が必要な場合は、専門家に相談しましょう。
炎上対策を学べる本を手元に
SNSのリスク管理や、炎上が起きたときの広報対応は、体系的に学んでおくといざというときに役立ちます。担当者の引き継ぎ資料として、チームで1冊共有しておくのもおすすめです。
まとめ:炎上対策は「予防」と「誠実な初動」
システムリサーチの調査では、SNSで批判を見た人の49.3%が購入や利用をやめた経験があり、その判断には「批判の多さ」より「出来事の中身」や「企業の対応」が影響していました。
SNS炎上対策は、①運用ルールをつくる ②投稿前のダブルチェック ③自社に関する投稿の確認、という予防の3ステップと、④事実確認と方針決め ⑤誠実な説明と改善策、という初動の2ステップで考えてみてください。SNSを「攻め」に使うためにも、まずは「守り」の準備を整えておきましょう。
参考にした出典
株式会社システムリサーチ「商品・サービスへのSNS批判を見た49.3%が購入・利用を中止した経験あり」(PR TIMES、2026年10月17日):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000259.000144334.html
山口真一「ネット炎上の実態と政策的対応の考察」総務省『情報通信政策レビュー』第11号(2015年11月):https://www.soumu.go.jp/iicp/chousakenkyu/data/research/icp_review/11/11-4yamaguchi2015.pdf