広告費をかけて新しいお客さんを集め続けるのは、どんどん難しくなっています。そこで注目されているのが、すでに商品やブランドを好きでいてくれる人を大切にし、その人たちを起点に売上や評判を広げていくファンマーケティングです。
とはいえ、「うちにファンなんているのかな」「何から始めればいいのかわからない」という担当者の方も多いはず。
そこで参考になるのが、2026年10月に株式会社kazeniwaが公開した「推し活×お菓子 実態調査2026」です。この調査では、お菓子購入者の23.6%が「商品推し活層」に当たる一方、そのうち自分を「推している」と自認しているのは約半数にとどまる、という結果が出ています。つまり、企業からも本人からも気づかれていない「隠れファン」がいるということです。
この記事では、この調査結果をもとに、ファンマーケティングの始め方を5つのステップで整理しました。
ファンマーケティングとは
ファンマーケティングとは、商品やブランドに好意を持ち、くり返し選んでくれる「ファン」との関係を深めることで、長期的な売上や口コミの広がりにつなげる考え方です。
新規顧客を広告で集める施策とは違い、今いるお客さんの中からファンを見つけ、関係を育てていくのが特徴です。大きな広告予算がない中小企業や個人のお店でも取り組みやすい点も魅力です。
調査で見えた「隠れファン」の存在
kazeniwaの調査は、直近でお菓子やアイスを自分の意思で購入した18〜60歳の男女を対象に、インターネットで実施されたものです(スクリーニング2,000人、本調査500人。本調査は2026年10月1日)。
この調査のおもしろいところは、「推し活」という言葉を最後の質問まで見せずに、行動だけでファンかどうかを判定している点です。次の4つの条件をすべて満たす人を「商品推し活層」としています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 好意 | その商品が好き |
| 指名性 | 品切れやセールのときでも、その商品を選び続ける |
| 応援性 | メーカーを応援したい |
| 他者波及 | 人にすすめたり、広めたりしたことがある |
主な結果は次のとおりです。
- 4条件をすべて満たす「商品推し活層」は23.6%(500人中118人)
- そのうち、商品を「推している」と言われて違和感がない人は55.1%。残りは「どちらともいえない」または違和感がある
- 商品開発のアンケートや投票に参加したい人は64.2%なのに、実際に参加したことがある人は22.4%(41.8ポイントの差)
- 参加の場として望まれていたのは「Webサイト・会員サイト」が74.1%で最多
- 名前が挙がった商品は、期間限定品よりも定番商品が中心
この結果から見えるのは、ファンは限定品やコラボ商品だけでなく、いつもの定番商品にもいること、そして「関わりたい」と思っているのに、その場が用意されていないということです。
ファンマーケティングの始め方5ステップ
ステップ1:自社にとっての「ファン」を行動で定義する
まずは、どんな人を「ファン」と呼ぶのかを決めます。「好き」という気持ちだけで判断すると、調査のように好意を持つ人が大半になってしまい、施策の対象がぼやけます。
kazeniwaの4条件(好意・指名性・応援性・他者波及)を参考に、自社なら「年3回以上リピートしている」「レビューやSNSで紹介してくれた」など、データで確認できる行動に置き換えてみましょう。
ステップ2:今いるお客さんの中からファンを見つける
調査が示すとおり、ファンは本人も自覚していないことがあります。購買データのリピート回数、レビューやSNSの投稿、問い合わせの内容、アンケートの自由回答などから、ステップ1の条件に当てはまる人を探してみてください。
はじめから大がかりなツールを入れる必要はありません。まずは既存のデータを「ファン目線」で見直すだけでも、意外な発見があるはずです。
ステップ3:ファンが参加できる「場」をつくる
参加したい人が64.2%いるのに、経験者が22.4%しかいないのは、企業側が参加の入り口を用意できていないからだと考えられます。
調査では、交流型の場が、LINEのようなクローズドなチャネルや公式SNSよりも好まれ、「Webサイト・会員サイト」が74.1%で最多でした。まずは、自社サイト上で新商品のアンケート、パッケージ案の投票、商品への要望フォームなど、気軽に参加できる企画から始めるのがおすすめです。
ステップ4:ファンの声を反映し、「反映したこと」を伝える
声を集めただけで終わると、ファンは「言っても変わらない」と感じて離れてしまいます。いただいた意見をもとに改善したことは、「みなさんの声から生まれました」と発信して、参加した人にきちんと伝えることが大切です。こうした体験が、応援したい気持ちや、人にすすめる行動につながっていきます。
ステップ5:指標を決めて、小さく測る
ファンマーケティングは効果が出るまでに時間がかかるため、途中で「成果が見えない」とやめてしまいがちです。最初に、リピート率、ファン定義に当てはまる人の数、レビューやSNSでの言及数、企画への参加者数など、追いかける指標を決めておきましょう。
いきなり全体の売上と結びつけようとせず、まずは「ファンの数」と「参加の数」が増えているかを見るのが続けるコツです。
注意したいこと:ステマにならないように
ファンに商品を紹介してもらう施策を考えるときに、必ず押さえておきたいのがステルスマーケティング規制です。消費者庁によると、2023年(令和5年)10月1日から、ステルスマーケティングは景品表示法違反となっています。
規制の対象は「広告であって、一般消費者が広告であることを分からないもの」で、企業がインフルエンサーなどの第三者に依頼・指示した投稿も含まれます。また、規制の対象になるのは広告主である事業者です。
ファンに商品を提供して投稿をお願いする場合などは、広告であることがわかるように表示してもらうことを徹底しましょう。ファンとの信頼関係を守るためにも大切なポイントです。
もっと深く学びたい人へ
ファンを大切にするマーケティングの考え方を体系的に学ぶなら、書籍から入るのもおすすめです。考え方の土台を押さえておくと、自社に合った施策を考えやすくなります。
まとめ:まずは「隠れファン」を見つけることから
ファンマーケティングの始め方をおさらいします。
- 調査では、お菓子購入者の23.6%が「商品推し活層」。ただし自認しているのは約半数
- 参加したい人は64.2%なのに、参加経験者は22.4%。参加の場が足りていない
- 始め方は「ファンの定義 → 発見 → 参加の場 → 声の反映 → 指標で測る」の5ステップ
- ファンに紹介してもらうときは、ステマ規制に注意する
ファンは特別な商品だけでなく、定番商品のまわりにもいます。新しいお客さんを追いかける前に、まずは目の前のお客さんの中にいる「隠れファン」に目を向けてみてください。
参考にした出典
株式会社kazeniwa「お菓子購入者の23.6%が「商品推し活層」、自認しているのは半数のみ」(推し活×お菓子 実態調査2026、PR TIMES、2026年10月19日):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000016018.html
消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/