「会社の公式アカウントで発信しても反応が薄い」「BtoBは商材が地味でSNSに向かない」。そんな悩みから、いま注目されているのが経営者や社員が個人名を出して発信する方法です。顔と名前が見える発信者を立てることは「企業IP(キーパーソン)化」とも呼ばれます。
株式会社PRIZMAが2026年11月4日に発表した調査では、BtoB企業で個人名を出した発信に注力している担当者505人のうち、企業公式SNSで企業IPを起用するメリットとして73.7%が「企業やブランドへの信頼感・親近感の向上」を挙げました。この記事では、その調査結果をもとに、社員のSNS発信を始めるための5つのステップと注意点をまとめます。
BtoB企業の「企業IP」調査の主な結果
調査はPRIZMAが2026年10月9〜14日に、BtoB企業で経営者や社員の「個人名出し」での情報発信に注力している経営者・役員、マーケティング担当者、広報・PR担当者505人を対象に行ったインターネット調査です。
「企業の顔」は営業担当が最多
| 「企業の顔」として起用している役職・立場 | 割合 |
|---|---|
| 営業・セールス部門の責任者や担当者 | 34.1% |
| 代表取締役・CEO | 31.9% |
| 取締役・執行役員などの経営陣 | 31.9% |
| マーケティング・広報の責任者 | 29.5% |
経営者だけでなく、顧客と直接接する営業担当が「顔」として最も多く起用されていたのが印象的です。リリースでは、顧客接点づくりや商品理解の促進も期待されていると解釈されています。
メインの発信先は公式SNSとオウンドメディア
- 企業公式のSNSアカウント:43.0%
- 自社のオウンドメディア:32.7%
- キーパーソン個人のSNSアカウント:29.9%
公式チャネルで網羅的な情報を、個人アカウントで専門性や熱量を届ける、という使い分けが進んでいるようです。
媒体ごとに得られるメリットが違う
| 媒体 | 最も多かったメリット | 割合 |
|---|---|---|
| 企業公式のSNSアカウント | 信頼感・親近感の向上 | 73.7% |
| プレスリリース・PR配信 | 信頼感・親近感の向上 | 74.1% |
| ウェビナー・オンラインイベント登壇 | 信頼感・親近感の向上 | 66.7% |
| ホワイトペーパー・eBook | 専門性の認知獲得 | 57.5% |
課題は「ネタ切れ」と「個人への依存」
- 発信内容(ネタ)の枯渇:38.6%
- 発信者個人の熱量や負担への依存:32.3%
- 炎上や不祥事によるブランド毀損:29.7%
個人名を出す発信はメリットが大きい反面、続けるための仕組みづくりとリスク管理が欠かせないことがわかります。
なぜ今「人」が見える発信なのか
背景のひとつが、情報の探し方の変化です。株式会社フォーエムが2026年11月4日に発表した調査(全国の18歳以上400人)では、AI検索・AIチャットの利用経験者のうち、AIのおすすめに疑問を感じたとき確認する情報源として「お店やメーカーの公式Webサイト」が44.2%、「比較サイト・まとめ記事・ブログ」が35.3%でした。
AIや検索で候補を見つけたあと、最後は公式の情報や、信頼できる人の言葉で確かめる人が多いということです。BtoBでも、担当者の顔と考え方が見える発信は、検討の最終段階で「この会社なら任せられそう」と感じてもらう材料になります。
社員のSNS発信の始め方|5つのステップ
ステップ1:目的を「信頼」か「専門性」かで決める
調査では、SNSやプレスリリースは信頼感・親近感、ホワイトペーパーは専門性の認知に効いていました。PRIZMAも「親しみやすさが必要か、専門性が必要か」を明確にして媒体を選ぶことを勧めています。まずは自社に足りないのがどちらかを決めましょう。
ステップ2:発信者と担当テーマを決める
役職ごとの最多テーマは、CEOが「自社製品・サービスの紹介や最新情報」(69.6%)、マーケ・広報の責任者が「業界トレンドやニュースの解説・考察」(51.7%)、カスタマーサクセス担当が同じく業界トレンドの解説(60.3%)でした。立場に合ったテーマを割り振ると、無理なく続けやすくなります。
ステップ3:発信先を選ぶ(公式と個人の使い分け)
いきなり個人アカウントで始めるのが不安なら、まずは公式SNSやオウンドメディアに「担当者名つき」の記事・投稿を載せる方法から始めるのがおすすめです。慣れてきたら、個人アカウントで日々の気づきを発信する形に広げていけます。
ステップ4:ネタ切れを防ぐ仕組みをつくる
課題1位の「ネタの枯渇」について、PRIZMAは個人のひらめきだけに頼らず、客観的なデータや市場調査の結果を軸に、そこに見解を添える方法を提案しています。たとえば次のようなネタのストックを社内で共有しておくと、発信が止まりにくくなります。
- 業界のプレスリリースや公的統計への短いコメント
- よくある質問への回答(営業・サポートの現場から集める)
- 導入事例の裏話(顧客の許可をとったうえで)
- ウェビナーや展示会で話した内容の要約
ステップ5:運用ルールを決めて負担を分散する
「個人の熱量への依存」を防ぐには、投稿の下書き・チェック・画像づくりなどを1人で抱えない体制が大切です。撮影や編集、デザインなどは外部リソースに頼るのもひとつの方法です。
始める前に押さえたい注意点
ステマ規制:社員の投稿も対象になることがある
2023年10月1日から、広告であることを隠した表示(いわゆるステルスマーケティング)は景品表示法の不当表示として規制されています。消費者庁は、事業者が表示内容の決定に関与している場合は事業者の表示にあたるとしており、社員による投稿も、立場や内容によっては事業者の表示と判断されることがあります。自社商品を紹介するときは、所属を明らかにするなど、誤解を招かない書き方をルールにしておきましょう。
炎上リスクへの備え
調査でも約3割が「炎上や不祥事によるブランド毀損」を課題に挙げていました。顧客情報や未公開情報を扱わない、他社や個人を批判しないなど、最低限の投稿ガイドラインと、問題が起きたときの連絡ルートを事前に決めておくと安心です。
あると便利な発信の道具
ウェビナー登壇やオンラインでの対談、短い動画での発信を考えているなら、Webカメラなど映像・音声の環境を整えておくと見た目の信頼感が上がります。
まとめ|「誰が言うか」を設計すればBtoBの発信は変わる
PRIZMAの505人調査では、個人名を出した発信で約7割が信頼感・親近感の向上を実感していました。一方で、ネタ切れ(38.6%)や個人への依存(32.3%)が課題になっています。始めるときは、次の5ステップを意識してみてください。
- 目的を「信頼」か「専門性」かで決める
- 発信者と担当テーマを決める
- 公式と個人の発信先を使い分ける
- データを軸にネタのストックをつくる
- 運用ルールと分担で負担を減らす
いきなり完璧を目指さず、まずは1人・1テーマから小さく始めるのが続けるコツです。
出典:
株式会社PRIZMA「BtoB企業の『企業IP』調査」(PR TIMES):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000230.000149156.html
株式会社フォーエム「AI検索の使い方と情報確認に関するアンケート」(PR TIMES):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000057667.html
消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法の規制」ページ:https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/