大雨のニュースで、アンダーパスや冠水した道路で車が動けなくなる映像を目にすることが増えました。「もし自分の車が水に浸かったら、どうやって外に出ればいいんだろう」と考えたことがある人も多いのではないでしょうか。
楽天グループが2026年10月28日に発表した「2026年冬のトレンド予測」では、水没時の緊急脱出用に車のガラスを割る「車載ハンマー」の流通総額が約14.9倍に急増したと紹介されています(楽天市場における2025年と2026年の各8月1日〜10月1日の比較)。突発的な豪雨による道路の水没被害が相次いだことが背景とされています。
この記事では、JAF(日本自動車連盟)が公開しているユーザーテストの結果をもとに、脱出用ハンマーの選び方・置き場所・使い方をまとめました。僕も「車に1本置いておけば安心」くらいに思っていたのですが、調べてみると「割れない窓がある」など、知っておくべきポイントがいくつもありました。
JAFのテストで分かったこと|ハンマー以外では窓は割れない
JAFは、水没した車の運転席側のドアガラスを、身の回りのもので割れるかどうかを検証しています。試したのはヘッドレスト、小銭を入れたビニール袋、スマートフォン、ビニール傘、車のキー、そして3種類の脱出用ハンマー(ポンチタイプ・金槌タイプ・小型ポンチタイプ)です。
結果は、窓を割ることができたのは脱出用ハンマーだけ。ヘッドレストやスマートフォンなどでは割れませんでした。JAFは、狭い車内では力が入れにくいうえ、水没時は水の抵抗もあるため、基本的に脱出用ハンマー以外では割れないとしています。
フロントガラスや一部のサイドガラスは割れない
同じテストで、フロントガラスは貫通しにくい「合わせガラス」のため、脱出用ハンマーでも割れなかったと報告されています。さらにJAFは、一部の車種ではドア(サイド)ガラスにも合わせガラスが使われていて、割れない場合があると注意を呼びかけています。
つまり、ハンマーを買う前に「自分の車のどの窓が割れるガラスなのか」を確認しておくことが大切です。車の取扱説明書や販売店で確認できます。
水深何cmでドアは開かなくなる?
JAFは、水深によってドアが開くかどうかも検証しています。セダンでは水深60cmで後輪が浮き始め、車外の水位が高い状態ではドアに強い水圧がかかって開けられませんでした。水深60cmでは、計測器を使った条件で通常の5倍近くの力が必要になったとしています。
| 状態(セダン) | 30cm | 60cm | 90cm | 120cm |
|---|---|---|---|---|
| 後輪が浮いている | - | × | × | × |
| 完全に水没 | ○ | △(24秒) | ○ | ○ |
※JAFユーザーテスト「水深何cmまでドアは開くのか?」より。○はすぐ開いた、△は開けにくかった(数字は秒数)、×は開かなかった。2014年に特定の車両で行ったテストで、すべての車に当てはまるわけではありません。
完全に水没すると車内外の水位差が小さくなり、ドアが開くケースもあります。ただしJAFは、それまで待つのではなく、ドアが開かないときは脱出用ハンマーで窓を割ることや、車が前に傾いて浮いている場合は後席など水圧の影響を受けにくいドアから脱出を試みることを挙げています。そして何より、アンダーパスなど周囲より低い道路では水かさが急に増えるので、安易に冠水路に入らないことが最大の対策です。
車の脱出用ハンマーの選び方|4つのポイント
1. タイプ:ポンチ式か金槌式か
JAFのテストでは、ポンチタイプ・金槌タイプ・小型ポンチタイプのいずれもサイドガラスを割ることができました。
- 金槌(ハンマー)式:先端のとがった部分を振り下ろして割るタイプ。握りやすく、イメージ通りに使いやすい形です。
- ポンチ式:ガラスに押し当てるとバネの力で先端が飛び出して割るタイプ。小型のものが多く、振りかぶるスペースがない車内でも使いやすいのが特長です。
どちらが自分に合うかは、力の入れやすさや置き場所の広さで選ぶのがおすすめです。
2. シートベルトカッター付きか
事故や水没のときは、シートベルトのバックルが外れにくくなることがあります。JAFも、シートベルトが外れない場合は脱出用ハンマーのシートベルトカッター機能を使うよう案内しています。ベルトカッター一体型を選んでおくと、1本で2つの役割をこなせます。
3. 置き場所に合ったサイズと固定方法
JAFは「車内の手に届くところに常備しておくこと」が大切だとしています。グローブボックスの奥やトランクでは、いざというときに取り出せません。運転席から手の届く位置にホルダーで固定できるか、キーホルダー型のように身につけられるかを確認しましょう。
4. 家族の人数分・席ごとに
運転席だけでなく、助手席や後席の人も使えるようにしておくと安心です。後席に子どもを乗せることが多い家庭では、大人が後席側からも取り出せる場所に置いておくなど、配置まで考えておきたいところです。
楽天でも注目の脱出用ハンマー
楽天のトレンド予測では、ベルトカッター付きの車載緊急脱出ハンマーが例として紹介されています。購入時は、商品ページで「ポンチ式/金槌式」「シートベルトカッターの有無」「固定用ホルダーの有無」を確認してください。
いざというときの使い方
- 落ち着いてシートベルトを外す(外れなければベルトカッターで切る)
- ドアが開くか試す。水圧で開かない場合は無理をしない
- サイドガラスを割る。JAFによると、窓の四隅のどこかを割ると効率よく割れる
- 窓から脱出する。割れたガラスでけがをしないよう注意する
水が入ってきてから慌てないよう、一度家族で手順を話し合っておくのがおすすめです。
脱出できたあとも注意
国土交通省は、水に浸かった車は外から見て問題がなさそうでも、感電事故や電気系統のショートによる車両火災のおそれがあるとしています。浸水・冠水した車は自分でエンジンをかけず、販売店や整備工場に相談しましょう。
まとめ|ハンマーは「買って終わり」ではなく「置き場所と窓」まで確認
- JAFのテストでは、窓を割れたのは脱出用ハンマーだけだった
- フロントガラスは合わせガラスで割れない。一部車種はサイドガラスも合わせガラス
- 水深60cmでドアを開けるには通常の5倍近い力が必要になった
- 選ぶときはタイプ、シートベルトカッター、固定方法、人数分を確認
- 一番の対策は、冠水した道路やアンダーパスに入らないこと
脱出用ハンマーは、一度車に置いておけば長く備えになる防災グッズです。この機会に、自分の車のどの窓が割れるのか、ハンマーをどこに置くのかを確認してみてください。
参考にした情報
楽天グループ株式会社「『楽天市場』、2026年冬のトレンド予測を発表」(2026年10月28日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002716.000005889.html
JAF ユーザーテスト「水没時、何を使えば窓が割れるのか?」
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/disaster/window
JAF ユーザーテスト「水深何cmまでドアは開くのか?」
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/disaster/door
国土交通省「浸水・冠水被害を受けた車両のユーザーの方へ」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr09_000100.html